創作小説 < アイツ・6 >

子峰院の子平学・四柱推命 最新ブログ

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アイツ・6は夏休みの話です。夏休み中に書きたかったのですが

           予定通りに行かないのが、悲しいかな私の人生です。

  ※この話はフィクションです

( 習字同好会 )

校長と立ち上げた習字同好会は二年生の一学期には10人程の会員が25人以上

増えた為同好会からクラブへと昇格したのでした。校長は「来期からは部費予算が

沢山貰えるぞ」と喜んでいましたが、御歳のせいかお手本書きは大変そうで「そう

だ硬筆は、君にもお手本がかけるぞ1枚目は私が書くから2枚目からは書いてくれ

ないか、予定数以上書いてくれればその中から私が良い書を抜粋しよう。そうすれ

ば君の勉強にもなるからね、お願いできるかね。」と言われ六月頃より硬筆の

お手本を書く事になりました。クラブ員全員にある会の月干誌を買う様に言われま

した。それは中学生が捻出するには無理の無い安価な物でした。

不思議な事に私はその月干誌は必要無いと言われ、何故なのかとは思ったものの

聞いてはいけない気がして とうとう 聞けずにいました。

只、毎月皆と同じ様に書いた作品を月に1回校長に預け私は幾種類かの書式で数枚

渡しましたが、その作品が皆も同様に返却される事は1度も有りませんでした。

 桂子の家に行っている間の20日程はクラブを休み、8月提出のお手本は夏休みが

始まる前に書き上げ校長に渡し、心置きなく桂子の家族と過ごす事ができました。

 お盆が終って直ぐ久しぶりに部活に顔を出せば校長「久しぶりですね 日焼けし

た姿は君がどれだけ遊びに夢中だったか解りますよ。折角ですが早速に次ぎの

お手本を書いて頂けますかね、締め切りは切羽つまっていますけど」「今日帰って

書いて明日持ってきます」と約束して次の日迄に何とか仕上げた。楽しみの後には

何時こうなんだな~、でも夏休みの遊ぶ行事は何一つ辞められないと思うので

あった。

 私にはこの夏休の最後にはもう一つの行事が残っており、その前に宿題を仕上

げておかなければ、そして夏休みの最後は「やったー」と万歳をするのだと

決意をしたのであった。

 

( 山登り )

 夏休みの終わり頃に市内で一番高い山に登る事を、男女数人と約束をしていた。

その山は市内の小学生が六年生になると遠足に行く山で、初心者級の登山者が

登るような山である。

 中学一年の夏休みお盆過ぎの海はクラゲが出没して遊べなくなり、何をして

過ごそうかと言う話になった時、誰かが「あの山に又皆で登ろう」と口火を切って

多数の遊び好きが乗り気になって登ったのだが、「今年も又登ろう」と誰かが言い

出し、昨年一緒に登った仲間に数人減り、数人が増えたのであった。減員には

郁がいた。その訳は何時もの様に無言であったが、皆の意思疎通は無言の内に

納得できており要らぬ詮索は誰一人する者は無かった。増員にはアイツがいてどう

もかなり楽しみにしている様であった。安藤「アイツ大丈夫かな、運動苦手みたい

だし途中でリタイヤーしても誰もデッカイアイツを背負って連れて帰れないから

よく言い聞かせておかんとな」と心配していた。幼いい頃から山に慣れ親しんでき

た。私は運動は苦手であっても、一端山に入れば猿の子の様に足裁きは自分事なが

ら他の友達に遅れをとる様な事が無かったが、アイツが安藤に言うには 私が出来

る事なら俺にだって間違いなくできる。と、安藤は大笑いして「一緒に行ってみた

ら思い知らされる」と言ったとか、

 当日は秋晴れの良い天気は登山日和、総勢20人以上集り男女はほぼ半数ずつで

あった。皆ワイワイガヤガヤと賑やかに登り山の三分の二程の高さの所にある

電気製品の無い昔 冬山の上で作った氷を貯蔵していたと言う、洞窟をお行儀良く

見学した。アイツ「そんな昔に氷が必要だったのかな?」すると誰彼なしに

「此処は昔から港町村でもあるし漁業で生計を立てる町村でもある。海に接して

いない隣り合う町などに魚を運だり、夏等暑い時期に新鮮さを保つには氷は大事な

物だった。だからこの場所は、この地域の人に取っては今も神聖な場所なんだよ」

「僕は勉強不足だね。親父の仕事上転勤が多く様々な場所で暮らしたけど、

こんな風に地域の事を教えて貰った事が無かった。今日は社会勉強ができて

とっても良い日だ」と、アイツは大きな身体ごと微笑んでいた。

男子は特に何時も勉強が出来るアイツを羨ましく思っていたが、今日は俺らだっ

てそう捨てた者では無いと実感できて喜んでいた。

そして皆して絶対に今日は良い日で終らせるぞと何故かしら意気込んでいた。

              お わ り

登場人物

○私ー農家の1人娘で1人っ子 家族は色々な仕事をして現金収入を得ている。

日曜日は天気であれば、同じ年頃の男女の子供達が家にある卓球台目当てに

集って来る。

○アイツー中学1年生の二学期の初めに転校してきた男子 ノッポで眼鏡を

かけている。弁護士志願で父親は裁判官。

○安藤ー小学生の頃からの幼友達。 ○郁ー小学生の頃よりの幼友達で親友。 

 

※夏休みは終ったと言うのに(山の登り)はまだ続きます。

 

今回の漢詩は、李商隠氏による「夜雨奇北」を選びました。

( 夜雨奇北 )   夜雨、北に奇す

君問帰期 未有期   君、帰る期を問えど、いままだ期にあらず

巴山夜雨 漲秋池   巴山(はざん)の夜雨 秋池(しゅうち)にみなぎる

何当共剪西窓燭    いつかは共に西窓(せいそう)の燭(ともしび)をきり

却語巴山夜雨時    却って巴山の夜雨を語る時なるべき

                        (  李商隠  )

※感じた、ままに訳して見ました

( 訳 )

君に「何時赴任先から帰ってくるのでしょうか」と聞かれても

まだ何時帰れるか目処がつかないんだよ。

巴山に降りしきる秋の夜の長雨は池の水を満ち溢れさせていきます。

いつか必ず あの西側の部屋で窓側の光は燃え細り、灯心を切って明るくしながら

夜長共に語り合いましょう。

巴山で長雨の中、君の事を思い長い夜を過ごした今宵の事も

楽しくお話が出来るでしょう。

 

※赴任先から、妻を思い夫がしたためた詩です。

※巴山とは、四川省の事。 

※剪燭とは、火が細ると灯心を押して出して先端を鋏で切って

灯りを明るくする作業の事。

 

( 感想等 )

この詩には妻を思う情愛と時間の流れがロマンを漲らせています。

この方が赴任された年に妻は亡くなっており、この詩はもしかしたらご婦人の

死を知らずに書かれたのでは無いかとの逸話もあり、秋の物悲しさを一層に

深める詩です。

 

子峰院 和珞の創作小説。           ※無断転載禁ず