創作小説 < アイツ・11 >

 

子平学について最新ブログ

(滴天髄の母子論と現実社会での親の期待について)

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https://sihoin-waraku.hateblo.jp/entry/2022/11/05/132221

 

創作小説 アイツを楽しみにして頂いている方がおられまして

お待たせしました!「そんな事はない」と声が何処かで聞えてくるような?

それでは(アイツ)の始まりです。

 

( 美枝の家に行く )

休み時間が長い昼休みは、昼食が済めば違うクラス、幼友達の久美と靖子の部屋の

ローカで三人窓の方を向き代わり映えのしない風景を眺めながらお喋りをするのが

日課であった。二人は学校から直ぐの橋を渡って私の家は右に彼女達の家は左に

曲って一km程の所にあって、小学校の高学年の頃は特に通学の往復はいつも三人

一緒だった。なので誰よりも一緒にいて気楽な相手でもあった。彼女達は園芸部で

一緒の美枝とも仲良しだが、昼休み時間美枝は他の友達と過ごし一緒に過ごす事

はなかった。靖子「美枝がおいでって言うから、今度の日曜日美枝の家に遊びに

行かない?」彼女の家は、県道を道なりに自転車で30分程走り、それからは県道が

きつい坂道になので、坂の下の知り合いに自転車を預けて坂道を歩く事数十分、

県道をそれ横道に15分程の所にあると言う。「だからお弁当持参でね」。家族に

許可を貰ってから後日「行きましょう」と返事をしました。

 当日は晴天ピクニック日和、三人は自転車に乗り出かけました。

自転車を預けて、舗装された道は広くその頃自動車の交通量は少なく

快適に歩き始め峠の天辺近くから左折、舗装されていない自動車が何とか通れる

山道へと入り15分ほどで美枝の家の裏道に到着すると靖子「美枝は家にいないの

よ この道を真っ直ぐ行けば豆畑にいる美枝と会えるから」と、久美も事情を弁え

ている様で何も質問をしない、不思議そうな私の顔を見た靖子「美枝は今日広い

畑の豆を抜く仕事を両親から言い使っているのよ。それで私達に手伝ってくれない

かって助けを求めてきた訳、それならまさるも仲間に入れようかと私の考え、

あんたはさ!いつだって何にも聞かない何時詳しい事を聞いてくるのか待って

いたけど、とうとう聞いてこなかったね」「なにか面白い事があるんんだろう

な~と思ってはいたけど、豆抜きとはね 家は僻地にあると聞いていたからどんな

場所に住まいがあるのか興味があってね。学校からは遠いと聞いていたけど

何時も遅くまで手伝ってくれるから知るチャンスに乗らない訳には行かな

かったのよ。チャンスをくれて有難うね」久美「そりゃ良かった」と美枝の畑へと

向かった。道なりに歩いて行くともう近所には一軒の家も無く広い丘陵に木も草も

なく手入れされた畑一面に薄茶色の大豆の枝がそこいらじゅうに立っていたがある

程度は抜かれ後は所々に豆が枝ごと束に置かれていた。道から丘の上を見上げると

麦藁帽子の美枝が手を振って合図をくれた。三人は美枝の元へとよじ登る格好で近

寄り「良く来てくれたわね」と美枝、私は「ご招待に預かっていませんが」と

言えば「ゴメン・ゴメン靖子が無理にも誘うって言うものだから、私は気が進まな

かったけど」「うんんん来たかったのは私、美枝がどんなところから学校へ通って

いるか知りたくってね。じゃ先ずはこの豆を抜いていこうか」「よろしくお願い

します」「はいよ!」と三人声を合わせて。四人で豆を抜けば早い事早い事、お昼

になって美枝の為にも三人でおにぎりやお惣菜を用意したものを四人揃って食べた

美枝「悪いわね手伝って貰った上にお弁当まで用意して貰って」靖子「皆、世話焼

きおよねさんだから」と一時間ほど休憩の後一時間の作業で広い豆畑の大豆が抜か

れ束ねた大豆があっちこっちと転がっている「あの束はどうなるの?」

「両親が夕方には帰るから道まで人力で降ろして後はリヤカーに乗せて運ぶのよ」

「それ私らがしたいけど、もう帰らないとね」「これだけ手伝ってもらえれば両親

も大助かりよ」美枝の家まで四人で帰って、家の前の長椅子においてあった祖母

より預かった芋とキュウリとトマトを渡した。「美枝はここから、私らが来た道で

学校に行くの」と聞けば「ここからは、山の中の獣道の様な細い近道を小中学校

の子らも一緒に自転車置き場まで歩いて、小学生は徒歩で中学生はそれより遠い

中学校まで自転車で行くのよ。でも貴方達は帰りも逸れるから今来た道を帰らな

ければ駄目よ」「仕方無いよね」それから「又明日ね」と美枝と別れた。暫く県道

に出る道を歩いているとピッピーと自動車のクラクションが、振り返ると中年の

女性が車を止め「自転車の処まで送って行くからオンボロだけど乗りなさい」

と言ってくれ三人は疲労もあって「有難う御座います」と言って乗った。車の

シートに座れば車の床に穴が開いていて道路が見えた。「ゴメンよオンボロで」

「いえ、助かります。」「そうよね、こんな車でもこんな所に住んでいるとね

大助かりなのよ。それにしても今日はご苦労さんだったね。あの広い畑の豆が

すっかり抜かれていてビックリしたよ。美枝に聞いたら友達が手伝ってくれたっ

て言うものだから追っかけて来たんだよ。私は美枝んちの隣の小母さん、

よろしくね」「よろしくお願いします。」「さすが美枝の友達だー元気が良い事」

車内で四人お喋りが弾むと直ぐに自転車を預けた家に着いた。丁重に御礼を言った

小母さんも「又あの僻地へ足を運んでよ待ってるから」と自動車は走り去って

行った。三人は深々とあのポンコツ車の後ろ姿に頭を下げた。それからは三人は

ひたすら自転車を漕いで無事自宅に帰りついたのであった。

 

< 生徒会役員会と印刷 >

生徒会は各クラス役員と生徒会役員やそれに携る先生達、時々クラブの部長等が

出席して行われた。司会は会長のアイツと副会長の郁(かおる)が交代で行われた

書記の私は黒板に話し合いの内容や決定事項を書いて、会が終了すれば出席者全員

が部屋を出ていっても1人残ってノートに黒板の内容を書き写し、印刷の下書きを

済ませて部屋の片付けと戸締りをして部屋を後にするのだが、アイツと郁は「後お

願いね」と言って仲良く出て行くのであった。最初の頃は「書記の仕事は樂だ」と

言った話とは随分違うと思って淋しく悲しかった。職員室の担当の先生に下書きの

ノートを見せると「良く書けているね。これで印刷お願いします」と許可が下りた

翌日の放課後はガリ版印刷!原紙に鉄筆で文字を刻み 紙を下において網を乗せイ

ンクを塗ったローラを転がして一枚一枚印刷をするのだが、網を上げる作業を美枝

は無言の内に手伝ってくれた。クラス委員やクラブの部長、そして先生方の全てに

渡す程の枚数を印刷するのに五時を回る、途中美枝に「遅くなるから帰っても良い

よ」と言えば「せめて印刷が済むまでは」と言って手伝ってくれた。印刷が済み

美枝が帰った後、担当の先生に全てを渡して書記の仕事は終る。多分これから先も

印刷には美枝は率先して手伝ってくれるだろう、彼女を遅く帰す事には納得行か

ないのでアイツと郁に話すとアイツは「気がつかなかった、今まではどうして

いたんだろうね。一度先輩に聞いてみるよ」と数日後「印刷は書記の原紙が

出切れば後は役員が手分けして仕上げたそうだ これからは僕と郁も手伝うから」

と話は決ったのであった。つ・づ・く

               

今回は、種田山頭火の歌を一句

どうしようもないわたしが歩いている

作、種田山頭火

山頭火さんの歌はなんて良いでしょうか?な~も理屈が無いところ

が大好きです。その時その時の私の心情を現してくれる一言が、

いつもそこにあります。それは、無言でそばにいてくれる人、の様で

心が安心に包まれます。

 

今回も長い時間 お付き合い頂き有難うございました。和珞

 

子峰院・和珞の創作小説「アイツ・11」でした。