創作小説 < アイツ・12 >

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「日干・比肩についてと ある女性の人生」です

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 https://sihoin-waraku.hateblo.jp/entry/2022/11/13/150943

( 靖子と久美  )

 靖子と久美は従姉妹です。靖子は二人姉妹の妹、久美は九人兄妹の末っ子、

直ぐ上の兄とは5才違いその上の姉や兄達は私の叔父や叔母達と同級生で、

長い付き合いであったが、私は小学校下級生の頃は病気や友達との関係を嫌がって

いた為、その頃は付き合いは無く4・5年生からクラスも三人で同じであった事

から通学で一緒する事が多くなり大の仲良しとなったのであった。久美の父親は

酒造会社の番頭さん(家族の言葉)地主で裕福な家庭である。靖子の父親の勤務先は

知らないが会社務でサラリーだけの家庭は近所では珍しかった。靖子の父親は

インテリ風、近所では農作業着の小父さん達に比べると、いつも背広を着て珍しい

紳士であった。学校の行き帰りに出合えば必ず一言二言かけてくれ「おはようござ

います」「おかえりなさい。お疲れ様でした」等と近所の小父さんとは大違いで

あり後姿をボーっと眺めたりもした。靖子に、どこに勤めているのかと聞いた事も

無かったのである。靖子も久美も中学校を卒業すれば、県庁所在地にある、

服装学園に進学の予定で成績的には誰でもが入れる学校だが、学費はもとより

布代だの経費が掛かりお金持ちの子女が行く学校であった。だから二人共勉強は

しなくても良いのだと高を括っているだ、体育の時間等も時々さぼり体育館から

出てお喋りを弾ませたりと一寸問題児でもあったが、それは良い所の出は、過ぎて

先生に睨まれたりはせず要領の良さがあった。先生達も進路を知っていて殆んど

注意もしなかったのである。これが私だったらどんな待遇かと思えば良い所の子

に生まれたかったとつい思わずに要られなかったのであった。日曜日は我が家での

卓球を見過ごして久美の家の広い庭先でバトミントンを、三人で楽しんだ後のお昼

は七輪でカレーを作り食べるのだが、玉ねぎ、人参、じゃが芋を切って持って行く

のは私と靖子、久美はいつも我が家では到底食べられない牛肉を用意、カレーは

多めに作り余ったカレーは帰りに私の家族用にと鍋ごと持たせてくれた。

私は何時も遠慮なく頂いて帰るのであったが、お盆前や年末に必ず母は、久美の

母親に手作りの品物を渡し、

   久美の母親もそれをとても楽しみにしていたのだった。

 

 ( 書道クラブ ) 

  書道部は部員が増えていた。三年生は文化祭が終ると引退し、

部員は一・二年生だけになって、部長は一年生女子の久保さんが勤めてくれた。

クラブで私は、硬筆と初心の毛筆のお手本を毎月書き生徒会の仕事と園芸の

仕事で日々忙しく過ごして行った。

 

( 生徒会 )

 面倒で手間の掛かるガリ版印刷は、アイツと郁と私とで作業を行ったが、原紙に

ヤスリで原稿を書く作業は私、その後の印刷はアイツと郁の二人がお喋りしながら

仲良く楽しいそうに行い、出来上がったプリントを各先生方やクラス委員、クラブ

の部長に配る最後の仕事は私の仕事だった。二人に悪いと思うのはプリントを配り

「ありがとう」「ご苦労さん」「綺麗に出来上がったね」等と感謝誉められるのは

何時も私だった。それを二人に話せばアイツ「またまた、その話しをして、仕事を

分担して楽をしようとか思っていませんか」私は思わずアイツに拳を振り上げる

仕草をすればアイツ「そんな良い目にあいたいから今度は僕がプリント配るよ、

その次は郁に決まり」と変な方向に向かってしまい「そんなつもりでは無いけど、

二人共感謝されて下さい」郁「そうね、二ヵ月後になるけれど私も肖(あやか)り

ますわ」と三人は和気藹々と学校役員を続けたのであった。終り

           つ・づ・く 

     

 半世紀も前になるでしょうか、田舎ではカラーテレビや炊飯器、電気洗濯機、

冷蔵庫と便利な家電が各家庭に普及しましたが、電話なるものは会社や商店など

の特別な場所や裕福な家以外にはありませんでした。そんな御時世学生達の校外で

のアクセス・コンタクトの手段と言えば、余程の時以外は他人の電話を借りる事な

ど許されず その方法は皆無に等しく、約束の時間に遅れれば

「何かあったのでしょう」と想像するように、只意思の疎通や憶測以外にはありま

せんでした。現在では想像し難い時代でした。そんな時代を貧しいながらも、

将来への夢と希望を抱き、向かい風に不安募らせては克服して行く少年・少女達の

生き様を、今暫くは書いて行きたい思います。

          最後までお付き合い頂き「感謝」いたします。

 

子峰院・和珞の創作小説「アイツ・12」でした。