創作小説 < アイツ・14 >

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( 修学旅行 行き車中 )

 夜家族に見送られて生徒達は夜行列車に乗車修学旅行へと、行き先は大阪・京都

滋賀です。列車は早朝大阪駅に到着予定、生徒達には車中の時間はたっぷり

ありましたが、先生方よりお互い次の予定に響く恐れを考え自嘲するようにと

指導がありました。決められた座席に落ち着いた頃から、向かい合った

三~四人グループ毎にショータイムが始まりました。

 我がグループは、アイツが持参したトランプで先ずは婆抜のゲームが数回

行われた。

アイツは靖子・久美・私の女子三人に囲まれても躊躇する事無く、上手に女子

達の会話に参加、率先して会話を面白おかしく繋いで行きます。靖子も久美子も

夢中でアイツとの話しを楽しんでいるではありませんか。トランプが飽きると

アイツが「宮澤賢治風の又三郎の話しを知ってる?」久美「知らんけど」

「じゃ僕がその話しをするから聞いてくれる」と風の又三郎を空で語り始めま

した。

話しは「どっどど どどうど どどうど どどう」から始まり

夏休み明け2学期の始め九月一日に、教室は一つしかない小さな学校に転校

して来た変わった風貌の高田三郎が、校内や放課後学年を超えた友達との中で、

彼の優しさや真面目さが織り成す小さな出来事、時に不思議な出来事や彼が

不思議な言葉で友達を説得する話し等が、次から次へとアイツの口から

飛び出てくる。あっ!その話のラストは・・・!と、私は思った。

さーアイツはどう締めくくるのかと最後が楽しみだったけど何時までも話しは

終らないで欲しいと二つの願望は不思議で複雑であった。

ラストは原話通り変える事無く、三郎は風を残して・・・感情豊かな久美は

今にも泣きそうな顔していたが・・・私達の傍にも心成しか柔らかな風が

吹いているような・・気がつけばアイツが扇子で扇いでいるではないか!

涙顔の久美の顔は一変に笑い顔になり、通路横の座席の四人もアイツ

の話しに聞き入っていたが皆一緒に大笑いになった。

 修学旅行のこの時のためにアイツは読み慣れない童話を何冊も読み、

宮澤賢治風の又三郎にたどり着き、どの様に話しを進め終わらせようかと苦心と

努力を感じた私は、大笑いで拍手を送りながら心では感動の大泣きをしていた。

 

清水寺では )

 修学旅行の列車はこの後大阪駅で生徒達は下車、バスで大阪市内巡り、大阪城

から京都の梅小路蒸気機関車館金閣寺清水寺、そして滋賀県からは延暦寺

登る筈が、天候が悪くバスで琵琶湖大橋を渡る琵琶湖巡りへと変更になった。

自由行動は至る場所で許されたが、特に清水寺での自由時間は何処よりも長く

許された。清水寺で私は、久美、靖子、郁、美枝、桂子と六人で行動を共に

したが、アイツと安藤も何故だかくっ付いて来て、女子との会話に上手く溶け

込んでいた。アイツは何時も私の隣にいて、チビとノッポが可笑しいと心中

苦笑した。皆で歩いていると途中でアイツから腕を引張られお土産屋へと、

皆を呼び止めようとしたらアイツ人差し指を口にあて「シィー」と

「僕らはここから皆とはぐれる」と言った。家族へのお土産を時間かけて二人で

品定め、そこから集合場所へとゆっくり歩きながら「僕に面白い話をしてくれる」

「私はそんな用意はしていないし、不器用だか突然は無理よ」と言い返すと

「そうか」と残念そうなので、「久美の兄さんがね。去年ステレオを買ったの

で聞かせてくれると言うから行ったら、大きな箱が二つに真ん中にプレやーが

あってプレヤーにレコード盤を乗せ針を神経質においたら、レコードは回り

音が出る大層な仕組みなんだけど、その時に聞かせてくれたのは蒸気機関車

走る音、その音は目を瞑ればまるですぐそばで機関車が走っている様で、強弱は

勿論右から左へと音が移動して、とても不思議だったけど聞かせてくれたのは

それだけでもっと音楽とか聴きたかった」と言えば「ステレオは、一年生の文化

祭で柴田君が作って展示していたのを見た」と聞かれたて「一年生の文化祭は

ボーとして生活していたから人の努力に気がついていなかった。そんな事があった

のね」「その時、僕はたまたま柴田君がオーケストラのレコードを流してくれて

感動的だったから覚えているよ。」「作れるんだ」「作れるけど頭脳と器用な

手先が必要だろうな」「柴田君は頭良いからね」「彼のお父さんはお医者だった

よな」「私の近所の人達は皆お世話なっていて、柴田先生は気さくで皆仲良し

だけど・・」と、話は途切れる事無く集合場所に到着すると、一緒に歩いていた

連中は「どこで迷ったの?皆心配していたけど司君が一緒ならと探さんかったよ」

と寄ってきてくれて一安心できたのだった。そしてアイツ耳元で「ステレオの

話はかなり面白かったよ」と言い眼鏡の奥で目が微笑んでいた。

           

( 帰りの車内 )

 帰りの席は、潤子と加茂さんと大戸さんと私の四人は向かい合わせで座った。

帰りはさすがに皆疲れていたが、日頃あまり話仲間ではなくても向かい合わせで

座ればお喋り好きな年頃同志の話は弾んだ。最初修学旅行の楽しい話は、自然と

近い将来の話しと変わった。

 加茂さんは、中学を卒業すれば父親の仕事関係で遠くの地へ引越し、高校には

行かずに引っ越し先で仕事を探す。と言う。

 大戸さんの家は、経済的に苦しいから公立高校なら行かして貰えるが私立なら

行けない。と言う。

 潤子は、公立受験に失敗すれば私立には行けるが、今となってはどうしても

公立の商業高校へ行きたいけれど、どうも学力が追いついていけてない。と言う。

 普段親しくしていない学友から個人的な状況を包み隠さずに聞かされて、

この状況を改善できるものなら何とか学年で協力し合わなければと思ったが、

疲れから四人は眠りについた。

 楽しい修学旅行を終えると、郁に四人との話のやり取りを聞いて貰った。

そして、私達は中学最後の学年をどう乗り切っていくのかが問われる時期へと

突入したのであった。あ~嵐の前の静けさ・・・

 おわり そして つ・づ・く

 

子峰院 和珞の創作小説「アイツ」でした。

 

 

宮沢賢治作 風の又三郎より

  どっどど どどうど どどうど どどう
  青いくるみも吹きとばせ
  すっぱいかりんも吹きとばせ
  どっどど どどうど どどうど どどう

 

 

 

もっと早くブログを書きたかったのですが、年賀状作成やお歳暮選びや

配送手続き等で今日になりました。子平学・四柱推命のブログも早く

仕上げて載せたいと思っています。(和珞)