創作小説 < アイツ・17 >

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https://sihoin-waraku.hateblo.jp/entry/2023/01/27/133036

  

高校受験)

公立志願の仲間の殆んどが、併願で私立の高校の入試を受けるが、まさるは

家庭の事情を考えるとその気が起きなかったし両親もその事に対しては何も

言わなかったが、ある日祖母は「母さんは、まさるは商業高校の入試は

合格するから、私立は受ける必要が無いと言うけれどな、人には運って言う

ものがあるから絶対に受けなければ駄目だよ」と言われて両親に相談すると

普段は学校や成績について何も言わない父親が「私立は受けとかんと、もしも

と言う事もあるからな、今日日高校ぐらいは出んとかなな まさるの将来

の事が一番大事じゃけんど 父ちゃんが皆に笑われるけんな」と何時もと違って

下手にものを言ってきた。「うん、わかったそうするから」母親は「まささんは、

時々強情になるけん 母さんもこれで安心できたわ」と言った。家族にこんな事

で心配賭けたかと思うと自分が情けなくなって、これからはもっと確りしなけれ

ばと思った。仲間の多くは県庁所在地の私立高校を受験したが、まさるは其処とは

反対の造船とパルプが盛んな自分の町とよく似た市の綺麗な海沿いにある私立高校

の商業科を選んだ。私立受験の日に乗車する駅は、早朝その時間は上りと下りの

列車が離合する。友達はまさるとは反対の方向の汽車に乗るのであった。

同時刻に両方の電車は左右に別れて出発した。

窓から仲間たちが見えたが、仲間たちはこちらを向いてくれるでもなく友達同士で

向き合って和気藹々の様子が見え、郁とアイツが向き合って座っているのも

見えた。まさるは、私はたぶんこれから先一人こんな風にして、

友達とは別の真逆の方向に生きていくのではないかと淋しさが込み上げてきたが、

それも良いかも知れないと思い直した。

車窓を眺めていると、突き出た半島が見えたかと思えばトンネル トンネルから

抜けたら入り江の海 半島 トンネル のくり返しの風景が続いて、私の住んで

いる近辺の地域は何と美しい所なのかと感動がつま先から頭の天辺まで貫いた。

私はきっとここからは離れない、もし離れてもきっと帰って来る。と何故か安心が

よぎった。高校に着くと想像した通りの場所で、その上磯の匂いが次から

次へと鼻の中を優しく潜っていく、海沿いに育った自分だからこそ味わえる気分

だと、受験生とは思えない程のゆとりで受験に向かった結果は、勿論合格の通知を

1週間後に受け取ったのであった。たとえ公立に落ちてもあの学校に行けるなら、

それも良いなと思ったが、家の経済状況を考えると、いえ!県立に絶対合格しな

ければ、と公立受験に向けて気合を入れ直した。

 そして、卒業式を終えた三月の中旬に行われた公立高校の入試を無事受験する事

が出来た数日後の受験発表の日、まさるは同じ中学校の同じ高校を受験した女子達

と待ち合わせて自転車で一緒に発表を見に行った。校門では男子達も待っていてく

れて揃って校庭で貼り出しを待った。その瞬間、皆で大手を広げて万歳をし

男子女子構わず抱き合ったのであった。

 学校の仲間達は皆合格、成績では志望校である商業学校は無理と担任に言われて

いたが、最後の模試では「行ける」と言われたのが潤子や美枝

そして大戸さんだった。その三人共無事合格を果した。その帰り道夫々が家路に

向かう為に何人かの友達と分かれて大橋を渡る途中で、橋の袂で手を振っている

アイツと安藤が見えた。自転車を走らせて追いつくとアイツ「どうだった?」

「商業高校は皆合格したよ」「そりゃ凄い、普通科高校は女子の野口さんだけが

残念だけど駄目だった」すると安藤「水産高校は、全員合格だったど」報告を

早々貰ったのであった。数時間後自宅で、他の市にある数校の公立工業高校に

受験した男子も皆合格したと連絡を受けた。

 それは、家族だけで無く学校中の先生方を喜ばせた。中でも校長先生は

「今年は、市内の校長先生方の前で鼻高々に偉そうな顔が出来る」と言って

大喜びであった。

 

そして、飛翔)

 まさるは、友達と先生方にお礼を伝えるために母校に行った後は手続きのため

進学校である商業高校へと母と自転車で向かい、その後の数日間は、教科書や

制服の為に母親と時間を費やし、まだ興奮冷めやらぬ友人達とも時間を共にした

が、毎日の様に我が家に訪れるのは隣家の潤子は、自分には夢があるのだと聞か

せてくれたし、毎金曜日は我が家に泊る桂子は自ら高校には行かない選択を

したが、中学を卒業してもこれまでの様に我が家に時々泊まりに来たいと、

そして簿記を教えて欲しいと頼まれた。

こんな風に友達は将来と真面目に向き合い桜の蕾の様に胸を膨らませて、

今、夢に向かって飛び立とうとしていた。

 

アイツ17 お・わ・り そして つづく

          子峰院 和珞の創作小説でした。

 

今日は 節分 巻き寿司をまるかぶりする日ですがこの歳になりますと 

巻き寿司一本を丸かぶりはきついものがありますが、頑張って「丸かぶり」

いたしましょう。細めのを買いました。ほんとうです。