創作小説 < アイツ・10 >

 郷里より届いた最後の芋から芽が出てきました。あまりに可愛いので端を切って

深めの陶器の皿に水をはって置きましたら、数日後芽は成長、水に浸かっている

切る口付近から根も生えてきました。貧しい我が家の観葉植物です。

家族1「いつまでそんな所にほっておくんや?大きな鉢に植えんと」

家族2「そうやで、鉢中満員御礼にせんと」何を考えているのやら

夢を見過ぎでしょう。

 皿においてほぼ一ヶ月が過ぎましたが、お芋は元気なもので

空いた大きな植木鉢があり、私も一寸その気になっております。

 

さて、お次は和珞の創作小説、アイツ

     お口直し、いえ!お目直しが出来るでしょうか?

 

<アイツ>

 最初の生徒会役員会は引き継ぎ程度で、スムーズに行きアイツと郁

に書記の仕事は少しも大変では無いと言われ文化祭の仕事は心置き

なく出来る事が嬉しかった。

文化祭は、主に文化部による一年間の成果を発表目的に行われる催しであるが、

希望すればクラブでなくてもグループや個人参加も許された。書道部は活動の

発表に加えて幾つかの文化部に案内表示等を頼まれたり、体育館の舞台では

めくりと、体育館後方の壁にはグループ毎に演目とグループ名を長い垂れ幕に

毛筆で書く事を校長先生より申し使ったのであった。初体験の大きな用紙に戸惑う

部員を手取り足取りで指導してくれた。最初部員の中には一生懸命のあまり額から

落ちる汗に気付かず字を滲ませ失敗する事もあったが、失敗を成功に又は反面教師

にして被害は少なく済んだと、校長先生は笑って言った。其の上部員には各自、

自由作品を仕上げなければならなかった。部活最後の三年生部員には月干誌の課題

と同じものを作品に、一・二年生には月刊誌の課題は休みにして、紙の大きさや字

は自由であった。

「良い作品を書けば、憧れた生徒が入部してくれて、部員が多くなれば部費予算

を多く取れ紙を多く仕入れられる。良い事づく目で、それは君達の努力に掛かって

いますよ。」と発破とプレッシャを掛けられたのであった。私は自由作品には自分

の名前の「勝」の広い用紙を選び書こうと思ったが、校長はそれよりも広い両手を

広げた程の用紙三枚を用意してくれて「これに書きなさい。練習には新聞を張り

合わせて作ったものを使って、清書はその三枚の内で決ると良いですよ」と言って

くれた。「勝ですか迫力を期待しますよ。やっと君らしさが出てきましたね」と

「ハッ!」と校長の言葉に驚き返事が出来ない私に、微笑みを返してくれた。

 他の部員にも校長から同様の提案と指導がされた。部員一同それはてんてこ舞い

の大騒動、それでも作業をこなして行くうちに、馴れ冷静に考え皆で話し合い

助け合い、昨年まで文化祭準備の校長を手助けしていた国語の高橋美雪先生からも

助言や手助けを頂いて、準備は着実に進んだのであった。

文化祭の前日垂れ幕は生徒会やクラス委員の男子の手で賭けられ、書道部の部室

には部員と校長と高橋先生の作品も張られた、入室と書かれたドアを入ると

直ぐに校長の要望で飾られた。

大きな用紙に毛筆で「助け合い」の字が、校長「作品としてはどうかなと思いま

したが、今回はこの字しか思い浮かびませんでした」素晴らしいを通り超えて

「凄い」の言葉が部員一同の口から自然に、校長もそれを聞いてご満悦そうで、

校長が離れると誰かが「校長先生って、可愛い人!」と、噴出しそうになったり

声を抑えて思わず笑ったりとすると校長振り返り「うん、どうしました」

誰かが「何でもありません」と皆で顔を合わせた。三年生の作品が月干誌の

課題だったが字形は違えていた。それを教室内では一番目立つ場所黒板に貼り

付けた。これは校長の要望だった。そしてもう一人高橋先生の作品は出口のドアの

側の壁に「努力」の字が飾られた。

高橋先生「私も作品としてはどうかと思いましたが、今回はこの字しか思い浮かび

ませんでした」と、もう皆大笑いで今までの疲れが一変に吹っ飛んだ気がした。

「気を抜いていられませんよ。明日は校内全ての展示物や催しを楽しんだら、

後日は片付けがありますから」と高橋先生。

 文化祭は、午前は体育館で催しを全校生徒と父兄が観覧、体育館では午後は

希望者による個人やグループによる催しで生徒達の観覧は自由で、

部室に展示の文化部の展示物を見学とで午後の時間を過ごしたのであった。

行動は気の合った友達同士が殆んどだあったが、書道部の皆は約束したわけでは

なかったが、1・2・3年生の部員一同が行動を共にして各文化部の部室を見学の

為に回った。美術部・手芸部・洋裁部・活花部の展示作品を皆して感想を述べ

合った。どの作品に対しても尊敬の気持ちが込められて、他の友達と見学したと

しても、こんな風に心を共有出来なかっただろうなと思いながら部員全員で丁寧に

見学を終えたのであった。

どの作品にも人の努力の汗を感じられる、これが「人の魂」と言うものかも知れな

いと思った。下校を許され部員と別れた時に私はフッと園芸部の事を思い出し、

花壇に走って向かった。なでしこ・マリーゴールド・ダリア・オシロイバナ等が

草一つ生えていない花壇に綺麗に整頓せれて何時もの様に咲いていた。

美枝が一人で世話をしてくれたのだろうかと思っていたら、美枝が向こうから

笑顔でゆっくりと歩いてきた。「ゴメンネ、ほったらかしで」「約束だから、

無事終ったね」「有難う」「私1人じゃなかったよ、園芸部は帰宅部の友達が大勢

で手助けしてくれから花達も元気、これからも手伝ってくれるとか言っていたよ」

「美枝の家は遠いのに悪かったね」「どって事ないさぁ」

秋の日はつるべ落とし!

お日さんの勢いは落ちて気配は落ち着き払い心淋しさは

美枝の帰宅の様子を心配した。「帰ろう!」

駐輪場所そして校門まで見送り「気を付けてね」と自転車に乗る美枝の後ろ姿、

時々手を振る美枝!彼女の姿が見えなくなるまで見送った。

「私も家族が待つ家に帰ろうっと」独り言

 家に帰ると母「まささん!上手に書けてるって皆が誉めてたよ」叔母達も

文化祭に来てくれたようだった「皆、皆って世界中の皆みたいに

ゆうんじゃねーよ」と父、すると祖母が父を睨みつけて「うにゃ!うちの血筋に

あげー上手にかけるもんはだーれもおらんよ まささんはほんに上手じゃー」」

と祖父は祖母の横で口癖の「けっこう、けっこう」と微笑んでいた。

 

今回、この創作小説の助っ人であるアイツを訳があって無視しました。

悪しからず御了承下さい。

1人よがりの創作小説、最後までお付き合い頂いた方がおられましたら

感謝しかありません。「ありがとうございました。」

 

子峰院、和珞の創作諸説{ア・イ・ツ}でした。