創作小説 < アイツ・8 >

 めっきり秋です!一日の仕事を終え健康の為の散歩に出かけると、外は暗く

なり、虫達の合唱と見上げる夜空の主人公お月さまが微笑んでくれているかの

様に見えます。虫の声と鼻歌交じりの私の歌とセッション!

「今日も一寸頑張った!」と自己満足に浸る散歩道・・・でした。

  (この広い野原いっぱい  森山良子)

   このひろい夜空いっぱい咲く星を

   ひとつ残らずあなたにあげる

   虹にかがやくガラスにつめて

 

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    <ア・イ・ツ>

(書道同好会から書道部へと)

 書道部は、新年度が始まってから入部人数が徐々に増えて、同好会から書道部

へと変更になった。それまでは部室も無く空いている教室を借り、道具等はその度

各自で持ち運んではその教室で書いていたが、人数が増えた事で同好会からクラブ

へと変更手続きを校長から仰せ付かり、生徒会に申し出たところすんなり受け入れ

られて、1学期の中旬は「書道部」と晴れてなった。部室も各クラスの教室よりも

広い教室が宛がわれ、数種類の紙や道具を整理する備え付けの整理棚があり便利

になった分だけ色々と各自は楽になっただけでは無く、書く場所を確保には

他の人に気遣う必要が無くなり自由な場所で書く事が出来るのであった。

それは部員に取っては何よりも嬉しい事であった。

 

(そして部活)

 二学期の初日始業式の日、放課後部室に行けば直ぐに校長が訪れ「二学期は

運動会や文化祭の用意で忙しくなります。」「運動会と文化祭ですか」と聞けば

「そうです。書道部を作ったには私の魂胆があります。昨年まで私は国語の先生に

手助けを頂き何とか行ってきましたが、わたくしも歳です。なにか良い手立てが

無いものかと考えたのがこの書道部です。君達はまんまと私の陰謀にはまった

わけです。陰謀にはまって頂いた限り最後までキッチリお付き合い願います。

言葉を足せばこの作業で君達には字の上達を間違いなく保障してくれますから、

わたくしも君達の将来をとても楽しみにしています」と訳は解らないが

期待を込めた言葉を並べ立てていた。

「で、まさる君!何を書くかや紙の大きさをざっとメモ書きしておいたから

皆で話し合って、手っ取り早く事を勧めてください。勿論運動会の方が先

ですから、そして文化祭には君達の作品も提出展示して下さい」と

言って部室を出て行った。

初体験で皆うろたえ、私は部長として皆をまとめ成功するにはと思案したの

だった。こんな筈ではなかった2学期は他の皆がせわしくしていても私は呑気に

やれると思っていたからその落差に戸惑いをかなり感じたのであった。

はてさて・・・

九月の終りの運動会には、書道部として活動は入場門や退場門や〇〇〇〇年運動会

と言った字を大きく書く必要があったが、枚数としては少なかった。それでも

大字は勉強・経験不足が祟り苦労を余技なくしたが、話し合いの結果一字を一枚

の紙で夫々一枚を書ける者が担当して書いた。出来上がった作品は、書き方は

同派の筈が個性的で並べて見れば結構面白く出来上がり、校長も笑いながらも

出来栄えには喜んでくれた。

            

(アイツ)

 制服のボタンが取れたと言って、アイツは休み時間に騒いでいる。

「どの辺のボタンが取れたんか」と男子が聞けば「前の下から二番目」

「それくらいだったそのままでも家に帰るまでは大丈夫」そうそうこの学校の

男子はボタンの1つや2つ取れても平気、そう思っているとアイツ半べそをかいた

様な顔をしていた。

「取れたボタンはあるの」と私が聞くと「あるある」「じゃ私が付けてあげる

道具は持っているから」「制服を脱いだ方が良いかな」「大丈夫そのまま簡単に

縫い付けるから直ぐに済むよ」「じゃ!じゃ!」と言って窓際に連れて行かれ

長い丈夫な白のカーテンの裏へと「そんな事をしなくても大丈夫だよ」

「いいから、いいから」とカーテンの中で二人入りボタンを付けてあげた。

カーテンから出るとクラスメイト達はもう夫々がしたい事に耽っていて知らん

顔だったので私はホッとしたのであった。アイツ「ありがとう。助かったよ」

「でも仮縫いだから帰ったらお母さんにチャンと付け直して貰ってね」

「判った」と言って目配せをくれた。次の日幹線道路に出ると手前からアイツと

郁が一緒に歩いて来るのが見えたので待っていると、アイツが走ってきて

「御袋がお礼を言っておいてと、言ってたよ。俺がさ、もう一度言うとお礼は一度

で良いと言って怒るだろう」「あー、それはどうも」郁が「どうしたの?」と

聞くので昨日の事を話してあげたら、郁「まさるは、ドジだけど縫い物だけはね、

女も自分の事は養える位の甲斐性は必要とか叔母さんに言われて、扱かれている

からね」「へーお母さんは優しいのにね」とアイツ、その日の十分足らずの

通学路三人の会話は私の事に終止して学校に着いた。 

ほんとアイツが来てからは、何時の間にかアイツのペースに振り回されていると

思うのであった。      お わ り

 

今回の漢文は、小学「稽古」の一文です。白兪と言う人は親孝行者で有名

だったそうです。

白兪有過其母笞之。泣 其母曰他日笞子未嘗泣

今泣何他 對曰、兪得罪笞常痛

今母之力不能使痛 是以泣

 

意味)白兪に過ちがあって母は白兪を笞(むち)で打つと、白兪は泣いた。

母は曰(いう)、今まで笞でうっても泣いた事が無いお前が今泣くのは

何故ですか、と。対(こた)えて曰く白兪 お母さんの笞はいつも痛かったのですが、

今のお母さんの笞は力が弱くて痛くなかったから泣くのです。

 

感想)この漢文を読んで、日本にもよく似た詩があったな

と思い出しました。次の詩です。

 

(たわむれ) 石川啄木

たはむれに母を背負いて 

そのあまり軽きに泣きて

三歩まず

 

 もう何も言葉は要らないと思います。

二つの詩を味わって頂ければと。

 

子峰院和珞の創作小説 ア・イ・ツ8 でした。